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豊田佐吉 1/6

大工の息子

 豊田佐吉は、1867年(慶応3年)に、静岡県の浜名湖近くにある吉津村(いまの湖西市)に生まれました。

 父親がうでのいい大工でしたので、小学校を卒業すると佐吉は父の仕事を手伝うようになりました。手さきがとても器用で、くぎをまっすぐに打ちつけたり、かんなをじょうずに使うこつをまたたくまにおぼえました。そんな佐吉を見て、父は目をほそめてよろこびました。

 「うん、こいつは、なかなかみこみがあるな」

 父は一日も早く、佐吉を一人前の大工にしたかったのでしょう。けれども、佐吉は、大工仕事が、あまりすきではありませんでした。ほんとうは静かに本を読んだり、じっと考えごとをしたりするのがすきだったのです。

 そのころ、父は、となり村の小学校の校舎をなおす仕事をしていました。

 「きょうから、ついてきなさい」

 ある日、父にいわれて佐吉はしぶしぶ小学校にでかけていきました。

 仕事は1週間以上もつづきました。はじめのころは、いやいやついていきましたが、そのうち、学校での仕事が楽しみになってきました。休けいのときに教室のそばに行って先生の話が聞けたからです。

 先生は若い男の先生で、佐田先生といいました。

 佐田先生は、1冊の本を読みながら、そのことについてくわしい話をしていました。苦労して、ある発見や発明にたどりついた外国の人たちの話です。

 佐吉はその本と佐田先生の話にぐんぐんひきつけられていきました。とくに佐吉の心をとらえたのは、糸をつむぐ機械を発明したイギリスのハーグリーブズです。

 「ハーグリーブズは大工だったんだ。とくべつな学問を受けたりしていない、ただの大工だ……」

 佐吉は、先生が手にしている本を、自分で読んでみたくなりました。そして、とうとうがまんができなくなり佐田先生に申しでました。

 「君は、いつもろうかでわたしの話を聞いていたね。あまり熱心なので、とても感心していたのだよ。ほかにもいい本がたくさんあるから、いつでもいらっしゃい」

 先生のかしてくれた本は『西国立志篇』といって、スマイルズという人が書いた発明家たちの伝記でした。


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