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福沢諭吉 1/9

しばられない心

イラスト 福沢諭吉がまだ12、3歳のころのことです。
 部屋を通りぬけようとして、1枚の紙きれをまたいだしゅんかん、兄の三之助が諭吉をひどくしかりました。
 「おまえは、目が見えないのか。ここには奥平のとのさまのお名前が書いてあるんだぞ。なんて失礼なことをする。ばちがあたるぞ」
 「あ、すみません。知らなかったものですから」
 諭吉は、すなおにあやまりました。しかし、心のなかは不満でした。
 「ほんとうの頭をまたいだわけじゃなし、ただ名前が書いてある紙きれじゃないか。ばちがあたるなんて……」
 紙きれでほんとうにばちがあたるのか、諭吉はためしてみようと思いました。
 神だなから神さまの名前が書いてあるお札をこっそりもちだし、まわりにだれもいないことをたしかめると、足でなんどもふみつけました。
 ちょっと不安な気もしました。しかし、3日たち5日たち、ひと月たっても、別になにごとも起こりません。
 「やっぱり、ばちがあたるなんてうそだ。そんなこと信じてたまるもんか」


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